いたとしてもせいぜい5人ぐらいだろうか。存命のファッション・デザイナーで、その名が唯一無二の美意識の別名といえるほどの人物は。たとえば、身体にまとわりついたときの、その上着の見えかたや、柄の違う生地同士が一体になってドレープするときに見せるそのコントラストといったものが、ああ、この人の服ならではだ、と言える、そういうデザイナーとして名を挙げることのできる人物は。
ラルフ・ローレンは、もちろん、そのひとりだ。アメリカのカントリー・ルックにたいする透徹した理解にかけて、彼の右に出る者はいない。そして、オーバーサイズ・テーラーリングの巨匠、ジョルジオ・アルマーニも5人のなかに入る。ミウッチャ・プラダとエディ・スリマンも外してはならないが、あとひとり、当然のことながらポール・スミスの名を挙げないわけにはいかない。
現在74歳のサー・ポール・スミスは、1967年以来、妻のポーリーンと連れ添い、今でも毎朝5時に水泳をする。溢れんばかりの活力と、遊び心に満ちたデザインの両面で、独自のヴィジョンによる服を世界中にひろめてきた。
彼がデザインするあざやかな色合いのテーラーリングや“ひねりのあるクラシック“と形容されるカジュアルウェアは、世界中で166を数えるポール・スミスショップのハンガーレールを彩っている。 |